(A5判283頁/定価本体4000 円+ 税)
教育内容(課程)・方法は誰がどのように決定するのか
「教育内容(課程)・方法は誰がどのように決定するのか」といった内容編成や条件整備にかかわる教育権規定の意義を明らかにすることである。そこで、第2次世界大戦後の国連機構(総会・人権理事会その他)・ユネスコ・ILOなどの関係諸機関等における「教育権」論議と関連動向を素材に、 法源をめぐる立案、成立、実施、展開等を含め経過の全体を追跡し総合的に分析する。(はじめにより)
<内容目次>
序章 本書の目的と課題設定
はじめに ― 目的と方法
第1節 4つの課題設定
1)教育権規定の教育論的意義
2)大戦後における教育権論の諸段階
3)教育内容・方法の編成と教育権の実質的保障
4)教師の役割変化と教育権の新段階
第2節 諸研究の状況
第1部 教育権の起点と展開
第1章 大戦直後の教育権の成立
第1節 世界人権宣言の教育権条項
1)教育目的の性格について(教育目的の自由)
2)非差別の理由、宗教教育、マイノリティでの対立
3)親の教育選択権(教育選択の自由)
4)無償義務教育をめぐる論議
5)基礎教育の問題
6)「発達の遅れ(backward)」に対応する条件整備
第2節 世界人権宣言成立期の教育権と年限延長論
第3節 世界人権宣言成立期の障害者の教育権論
12)障害者教育の重視とWallon
3)両義性をもつ「障害」への対応
第4節 「特別なニーズ」論と教育差別論の発展
1)児童権利宣言起草過程と「特別なニーズ」
2)優先された教育差別論(小委員会でも教育を重視)
第2章 教育における自由と基準性に関する国際的合意の成立
― 教育差別待遇反対条約と国際人権規約
第1節 世界人権宣言の条約化 ― ユネスコ教育差別待遇反対条約と国際人権規約
第2節 1960年教育条約と1966年社会権規約第13条の比較
第3節 Ammounによる国際条約の提言
第4節 国際的合意のための諸原則
第5節 ユネスコへの委託と機関の教育基準論
第6節 専門家委員会・作業部会での到達点と条約の採択
第3章 障害者権利宣言と障害児教育投資論
第1節 障害者権利宣言から障害者権利条約へ
第2節 D. Braddockの障害者教育投資論にみる教育目標としての「自足」
1)D. Braddock報告の位置
2)D. Braddockの出発点
3)「自足」概念について
4)コスト計算に見られる教育観
5)教育目的としての「自足」
第4章 教育の内的事項と「子どもの権利条約」
第1節 「子どもの権利条約」の成立と教育のあり方
1)条約の国内における適用
2)国際教育権規定による国家義務(国家に対する規制)
3)「条約」における教育内容・方法論の位置
4)教育法学の領域で
第2節 教育実践の諸条件、基準、主体にかかわる国際的合意形成
1)「条約」の成立経緯における教育内容の位置づけ
2)親の内容選択権と指導の権利
)対象の複合的性格と「特別なニーズ」
2)教育ニード論について
@ 教育機会均等と「特別な教育ニード」
A 学力や能力の制約
3)教育条約に対する評価
第2部 教育権と公教育制度原理
第5章 年限延長論と条件整備論
第1節 義務教育年限論の展開
1)共通の教育コア
2)就労期への接続ギャップ
第2節 無償初等義務教育の危機
第3節 市場万能主義と教育権放棄
第4節 無償初等義務教育における条件整備義務
第5節 実質的保障の仕掛け(“4Aスキーム”)と基準評価
第6節 「権利としての保障」が覆される論理
1)親(及び法定保護者)の教育選択権と子どもの権利
2)教育権保障と教育内容基準化
第6章 機会均等と論争的な問題
第1節 「教育機会均等」原則の新展開
第2節 「包括原則」の実効性
1)「包括原則」(an overarching principle)
2)「非差別・平等」
3)「インクルーシブ(包摂)次元(inclusive dimensions)」
第3節 論争的な問題
1)人的投資論の経緯
@ 前世紀の人的投資論
A 人的投資論の現段階
1)教育到達度評価論に対する疑念
2)「教育の質」のための規範
第7章 教育内容はだれがどのように決めるのか
― 子ども・教職員・保護者・住民・研究機関など
第1節 教育権と「教育の質」
第2節 教育目的と基準作成「主体」
1)「人格の全面発達」(the full development of personality)規定
2)主体(間)による教育内容編成の基準化
3)学力(調査)テストをめぐる攻防 ― McCowanの論議
第3節 基準作成「主体」と手続き:主体(間)対話と価値形成
第3部 教師の専門職性の関与について
第8章 「地位勧告」の成立と展開
第1節 「地位勧告」成立の意義
第2節 大戦直後の専門職性論議
1)「教員憲章」作成と教員調査
2)大戦直後の教育権保障と専門職性
第3節 「地位勧告」採択と性格
第4節 90年代までのフォローアップ
1)地位勧告の適用・実施状況と更新・条約化の期待
2)教職ストレス問題の浮上
第5節 90年代以降の専門職性論議の新段階(構造調整)
第6節 教員評価システムの新展開
第9章 教員評価基準をめぐる国際的合意形成にあらわれた二律背反
第1節 勧告にみる教員評価基準の二律背反
第2節 「基準−評価」論議と二律背反
第3節 二律背反を超えて(公共圏の構築)
第4節 二項対立を動的に捉える評価論の国際論議
1)成果主義「客観性」の問題性
2)国際競争と「主観性」基準
3)動的基準化の動向
あとがき―まとめにかえて
<著者紹介>京都橘大学教授